キャラクター研究

JAと最前線とワイルド7

「恐怖の暗殺団」編で、飛鳥次郎は敵ボスを追ってハワイに飛ぶ。ここで「最前線」の元二世部隊員たちと共闘することになる。隊員たちの「その後」が分かる、とても楽しい読者サービスだ。

そして約20年経過した隊員たちにワイルドのキャラクターの面影を見ることが出来る。医師になっているビー玉は両国、警察署長になっている"野牛"サミー渡辺=白井記者ではないだろうか? そしてJAのミリー=イコ、オンブ=志乃ベエ のイメージがあり、楽しく読めた。

二世部隊員たち
ミリーとオンブ

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撃てる時、撃てない時

「逮捕ではなく退治」をモットーとし、「地獄から来た警察」と恐れられるワイルド7。しかし全巻読んでみると、メンバーには「撃てる時」「撃てない時」があり、キャラクターを研究する上で非常に興味深い。ウィークポイントにこそ、人間性、本質が隠されているからだ。

まず、草波隊長。非情・冷酷が信条の男だが、最大・唯一のウィークポイントは恩人・成沢。「バイク騎士事件」では隊長でありながらワイルド7の使命を忘れ、敵に取り込まれる体たらく。以後も成沢からの頼みには弱い。しかし、「バイク騎士事件」でバッジを叩きつけてまで悪の退治に向かうワイルドたちの姿を見て、彼も変わって行ったのかも知れない。成沢は後期の作品では姿を表さないが、すでに第一線を退いたのだろうか?

リーダー飛葉大陸。美人で若い女性(ユキ)を冷酷に処刑できる神経を持っている(「コンクリート・ゲリラ」)。しかも、泣き落としを図る彼女に「どうせヒマだから聞いてやる」とは...。こんなセリフを吐く主人公は空前絶後だと思うが、そんな飛葉でも撃てない時がある。皇帝(カイザー)こと秋戸十次郎だ(「熱砂の帝王」)。「住人を守れなかった自分を斬れ」とサーベルを渡されるが、秋戸を手にかけられない飛葉。これは「義」に弱い彼の性格が良く出ている。住民を救うのに自らも参加しようとする秋戸の「義」に飛葉の心が動き、自らも戦いに参加する道を選んだ。秋戸は飛葉のそういう性格を把握しているので、処刑されそうになった時こうした演技をしたのだろう。また、「緑の墓」では、恩人を逃がすために隊を離れようとするオヤブンを飛葉は止められない。「示しがつかない」と南部を構える八百を飛葉は制止する。恩人への義理のためには裏切りも辞さないオヤブンの「義」には飛葉も弱いと見える。

サブリーダー格の八百。「首にロープ」ではワイルド全員にシシ座一味の「一人一殺」が命じられるが、好きな娘とのデートの前に殺しは出来ないという。「血によごれた手でレイちゃんにふれたくねぇ!!」という八百に対し、「かなり純情なんだな、あんた」と理解を示す飛葉。デート後に仕事にかかることを認めた飛葉だが、これが大惨事をもたらしてしまう。また、「魔像の十字路」では結婚を意識した(恐らく初めての女性では?)と思われる看護婦を脅迫から守るため敵に取り込まれ、それが致命的な結果となってしまう...。

同じくサブリーダー格のヘボピー。元ヒッピーらしく「進歩的でありたい」などと言っているが、ご存知のように硬派で古風な面が多いのが特徴であり個性だ。「コンクリート・ゲリラ」では日本少年漫画史上に残ると思われる凄絶な拷問を受けるが、解放された後、その拷問者に対し、「素手のやつをナイフでやるほど ひきょうなマネはいやだ!!」と素手による一対一の決着を望むのだ。重傷を負うというハンディがありながらも、「素手の相手には武器を使わない」という美学を持っている。素手の格闘には敗れたことがないという自信があり、感覚としては格闘家に近いのだろう。一方飛葉は、素手の相手に対しても平気で引き金を引ける男だ(「バイク騎士事件」)。プロの格闘家と素人が真正面で対峙した場合、戦力にハンディがあるのだから武器を使って当然という判断だ。飛葉は戦いを「格闘」ではなく、戦力vs戦力の「戦闘」だと合理的に理解しているようだ。同じ「戦士」でもヘボピーとは感覚が大きく異なるのである。

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キャラクター研究:両国(3)

ぶんか社文庫判27巻の292ページ。秘熊の潜水艦基地を破壊、脱出に成功したものの重傷を負い、身動きの取れなくなった両国。飛葉ともはぐれてしまう。

Sany0005

俺もワイルド
ただじゃ 死なねェ!!

(魔像の十字路)

常に携帯しているプラスチック爆薬をウニュ〜と取り出す両国。そしてそれを自らのヘルメットの内部にしかけているように見える...。

下って315ページ。動物園に連行されてきた飛葉に向かって、遠井弁護士の秘書のような人物が語る。

ヘルメット こちらへ
地獄で必要とは思えませんのでな
両国のとあわせ 秘熊さんに届けますんで...
記念にするそうですわ

両国はこれを想定してヘルメットに爆薬をしかけたのか?
プラスチック爆薬は信管をしかけないと爆発しない。問題は信管の起爆方法。どうやって起爆させるつもりだったのだろう。ヘルメットを被った時か。強い刺激を与えた時か。

両国は「運命の七星」において、自らのリボルバー(射撃者が死亡するように爆薬がセットされている)をターゲットである「軍師」に撃たせて差し違えようとしたが、それと同じようなに死ざまを選ぼうとしたのか。さすがワイルドだ。

両国と飛葉のヘルメットはその後どうなったのだろうか? 飛葉の反撃で最後の戦闘が始まるが、秘書らしき人物は戦闘シーンには登場しない。扇と遠井は飛葉によって倒されたが、秘書は逃げおおせてヘルメットを秘熊に届けた可能性はある。死した両国が、大悪魔・秘熊を倒す大金星をあげる可能性もあるということだ。最後の最後まで諦めない、この執念。まさにワイルドの真骨頂と言えるだろう。最高だぜ、両国。


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キャラクター研究:両国(2)

ワイルドのリーダー飛葉に銃口を向けた隊員は2名と思われる。オヤブンと両国だ。「緑の墓」でオヤブンは恩ある大親分を救わんがため飛葉にパイソンを向けるが、殺意はなかった。飛葉もオヤブンの行動を予期していたようで、抵抗せずにオヤブンを行かせた。

両国は「運命の七星」において、「裏切り者飛葉」にロケット砲の照準を合わせた。その時のセリフは、

せめてもの友情だ 苦しませはしない
1発で即死させてやるぜ!!

完全に「殺る気」モードである。必死に誤解を訴え、イコがハイジャックに遭っていてピンチであることを告げる飛葉だが、両国の返答は、

Sany0003

そいつも信じねぇ
かくごしな

であった...。この時の両国の薄ら笑いを浮かべた表情が最高。普段はバカばかりやっていて子供っぽい両国だが、やはり彼も悪党。しかも爆弾野郎だ。その異常性が垣間見得た瞬間であり、それがとっても怖いのである。

誤解が原因とは言えリーダー飛葉に向けて本気で発砲し、飛葉を心底恐怖させたのは両国だけ。普段はコメディリリーフの両国にこういう役どころをさせるあたりに、望月先生は人間の内面まで深く見てるな〜と感心するのである。

そんな異常性を秘めた両国であるが、「黄金の新幹線」において、

おれっちに まかせてみな
3分もありゃあ
だれにたのまれて 大臣をねらったのか
すっかりはかせて やるがね

と述べている。両国の拷問とは、一体どのような手法のものだろうか...? あまりに不気味で恐ろしくて想像できないのだが。飛葉は悪人の口にマイトを突っ込んで導火線に点火したり、オヤブンは肉鉄の局長をロープで牽引してジェットコースターのコースを激走した。両方とも結果的に相手を死なしてしまうのだが、両国の拷問は飛葉やオヤブンよりも絶対に陰惨なものだと確信する。

ふと思ったのだが、両国のモデルは「コンバット!」のカービィではないだろうか?小柄で子供っぽく冗談好き。そして短気。愛すべきキャラクターだが、彼の「得物」は小隊最強の火力を持つBAR(ブローニング・オートマチック・ライフル)だった。とても良いキャラクターだよね。


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キャラクター研究:両国

ワイルドのキャラクター研究を両国からスタートしたい。この両国というキャラクターは、様々な意味でワイルド7を代表する存在と思われるからである。

まず、彼の入隊経緯から。「バイク騎士事件」において、
●火薬を使って金庫破りを行い逮捕されたが、草波が救った
●花火会社の会長を恐喝し、社長以上の権力と収入を得ていることを草波が黙認している

という弱みを握られていることが語られている。

そして「野性の7人」において、MCプロ本社ビルを砲撃しながら

Sany0008

ヒーヒッハッヒッヒッヒッ
おれは こんな はでなことが だいすき!!

と生き生きと語っている。(草波隊長の命令を無視してヘボピーと飛葉救出に戻ってきたのだが、ホントはロケットを撃ちたかったんだろ...?)

両国はワイルドのメンバーであることで、銀行強盗という旧悪を免除され、現在の犯罪を黙認されていることで経済的利益、社会的地位を得、そして「火薬による破壊活動」という彼の趣味を合法的に行うことが出来る。まさにワイルドに相応しい人物であり、ワイルド7は彼のためにある組織といっても良いだろう。逆に、ワイルドがあるからこそ、彼の能力を社会的に正しく活かすことが出来ているとも言える。草波にとっては御しやすい相手。この両国こそ、ワイルドの典型的な隊員像だと思う。(実は、主役の飛葉がワイルドで戦う理由が一番薄く、正確な動機が不明なのだ...)

両国はプロフィールも他の隊員より若干詳しく描かれている。
●札幌出身(朝食に死を)
●花火師のせがれ(緑の墓)
●警視庁特捜隊主任 菊川凱夫といとこ同士(地獄の神話)

花火会社の係長というきちんとした表の顔を持っているし、ワイルドの中でも両国はかなり社会性がある存在だ。菊川主任といとこ同士という設定が面白い。八百はまったく親戚付き合いがないようなのに(八百長事件で親戚一同大迷惑したのだろう)。しかし、こんな犯罪者が特捜隊主任の親類にいるって問題にならなかったのだろうか。この問題を隠すために、菊川主任が草波に両国を紹介したように思うのだが...。

ファンの間で時折問題になるのが両国の年齢。行動はまったく子供っぽいのだが、口ひげの存在が気になるところ。両国は若いのか?オッサンなのか?

「バイク騎士事件」では、大邸宅、ベンツを得ているような描写がある。社内では専用の「係長室」を構え、6人の秘書をはべらせている。やっていることはいかにもオッサンなのであるが、最年少の飛葉と一番仲が良いというし(野性の7人)、「朝食に死を」では女子高生と付き合って情報を得ているし、ユキからは「両国くん」と呼ばれ、八百のことを「八百さん」と呼んでいるシーンがある...。僕の結論は「両国はユキより若いが、趣味がオッサンくさい(行動は子供っぽいが)」である。

次に、作品としてのワイルド7にとっての両国の存在である。彼のサイドカーに装備された火力(自走爆弾、多連装ロケット砲)の意義は大きい。戦力として大きいことはもちろん、ワイルド7のコンセプトにも大きく関わってくる装備ではないだろうか。詳しくは別項にて書こうと思うが、両国の火力こそ「ワイルド7=SWAT」の性格を明確に現していると思う。ワイルド7の両国の装備こそ、恐らく世界初のSWATコンセプトのビジュアルイメージ化ではないだろうか。

「小柄で子供っぽいキャラクターで爆弾魔」という設定は、永井豪作「あばしり一家」の「吉三」を連想させる。両国の影響か?と思ったら、「あばしり一家」の初回は少年チャンピオンの創刊号で、ワイルドの連載開始より1ヶ月ほど早いようだ。これには驚いた。「あばしり一家」も主人公側のキャラクター全員が悪党だが、ワイルドのように正義のために戦ったりはしない(笑)。

Photo

文庫判の裏表紙(書き下ろし)に、2008年仕様の両国のサイドカーが描かれている。

砲門数は4×4の16門。コミックスでは2×4(時折2×3になるが...)だから砲門数は2倍になっている。ロケット弾の発射口が四角く、カバーが付いているという新解釈も面白い。「超攻速ガルビオン」のオープニングのように、ロケット弾発射後、破れたカバーがヒラヒラと舞い落ちるのだろうか。そういう光景もぜひ見てみたいものだ。


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