アニメ・コミック

ワイルド7映画化への意見(銃器類:その1)

さて、次はガンへのコダワリについて。

ワイルド7のメンバーはなかなか個性的なガンを使用しているが、同じ種類のプロップガンを用意するのは困難だと思う。

それを前提に、どうしたらガンで「ワイルド7らしさ」を出せるかを考えてみたい(もう決まっちゃってるとは思うけど、ファンとしてひとこと言わせて欲しい)。

まず主人公、飛葉大陸の使用するコルト・ウッズマン短銃身モデルとショットガンについて。

ウッズマンは22口径のオートマチック拳銃で、命中精度は高いが威力はない
短銃身としているのは「抜き打ち」を速くするための改造で、デメリットとしては射程距離が短くなっている(それを補うため、延長銃身のアタッチメントを持っている)。

ショットガンは、カウボーイの「サドルガン」(馬の鞍に装着したライフル)から発想された装備で、近距離では問答無用、必殺の破壊力を持つ

ウッズマンとショットガンの共通点は「短距離戦向き」ということで、この設定がストーリーの中に活きてくる。

ファンに最高人気のバトルシーン「地獄の神話」の「植物園の戦い」では、ライフル、マシンガンを装備した殺し屋「ライフルマン・ジョー」との対決が描かれるが、「長距離戦向きのガン(ライフル、マシンガン) vs 短距離戦向きのガン(拳銃、ショットガン)」という設定(戦いの構図づくり)が本当に見事だった。

(詳しくはこちら)
「植物園の戦い」から望月アクションの魅力を探る
http://wild7.jp/3866

これを「機動戦士ガンダム」で喩えると、近距離戦の絶対的な武器「ビームサーベル」が、飛葉の「ショットガン」に当たる。
主人公のメカは、やっぱり「近距離格闘戦向け」という設定の方が、ストーリーが盛り上がる。

「サーキットの狼」の主人公、風吹裕矢のマシンは、1600ccの「ロータス・ヨーロッパ」
非力だがコントローラブルなマシンで、大パワーのポルシェターボやカウンタックを打ち破る姿が実に爽快だった。

この「ロータス・ヨーロッパ」が、飛葉の「ウッズマン」に当たる。
主人公の操るメカは、「非力だがコントローラブル」の方が、ストーリーが盛り上がる。
主人公のテクニックや「戦術眼」がストーリーの中で活かせるから。

主人公のガンが「万能」だったらストーリーが作りにくくなる。

飛葉のガンが「低威力の短距離戦向き」だから、長距離戦向きのユキのドゥカティ(対戦車ライフル装備)やオヤブンのパイソン357マグナム(6インチの長銃身モデル)、両国のサイドカー(ロケット砲装備)という、仲間(チーム)が必要になって来るし、お互いにサポートし合う関係がストーリーに組み込める。

ガン設定もキャラクター設定の重要な一部分であり、望月先生はそのあたりのことも計算に入れて設定しているはずだ。

映画版のガン設定も、ぜひそのあたりを考慮して欲しい。

また。飛葉のウッズマンとショットガンには、象徴的な意味も含まれていると思う。

飛葉の魅力として、シャイな少年「飛葉ちゃん」と、ハードボイルドなワイルド7のリーダー「飛葉大陸」という、「強烈な二面性」を持っていることがあげられる。

「少年」と「ハードボイルド」。

この「少年」の部分を象徴しているのが「ウッズマン短銃身モデル」で、「ハードボイルド」を象徴する部分が「ショットガン」ではないかと思っている。

というのは、ワイルド7の続編で飛葉が持っているゴテゴテした拳銃(リブ付き銃身のもの)が、どうにも「飛葉」らしく感じられず、「なぜ飛葉らしく見えないのか?」と自問した結果、ウッズマン短銃身モデルの持つ「少年性」に気付いたからだ(←大げさw)。

僕が思うに、ウッズマン短銃身モデルの、あの小っちゃくてツルンとした「先っちょ」は、がきデカの「こまわり君」やトイレット博士のメタクソ団の連中が股間にぶら下げているモノに形態が酷似している。
つまりこれは「少年性の象徴」なのではないか...?

飛葉には、「飛葉らしいガン」を持たせて欲しいのである。

ショットガンは現代版らしく、ストックがフォールディングタイプだったり、あるいはセミオートのモノも良いだろう。基本的には何でも良い。

だが拳銃の方は、飛葉らしい「少年らしさ」を感じさせるシンプルな外観で、テクニックが活かせる、非力だがコントローラブルなモノ(小口径)でないと困る(もちろんオートマチック)。

それが満たされるなら、ウッズマンでなくても良いが、「ワイルド7らしさ」を出すには、銃身が露出したスタイルでなければならないだろう(結局、かなり限定されてしまう訳だが...)。

要するに、最近映画などで良く見かける、SIGやグロック、ベレッタM92とかじゃ、ぜんぜん「飛葉」にならないということなのである。「なぜウッズマンなのか」「なぜショットガンなのか」をキチッと考えてくれたら良いな、と思うのだ。

Hiba_woodsman

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ワイルド7映画化への意見(コスチューム編)

映画「ワイルド7」いよいよクランクイン。
北九州FC(フィルム・コミッション)のサイトに、エキストラの撮影スケジュールが載っている。
それによると、政治家などが集る大規模なパーティのシーンがあるようだ。

羽住英一郎監督最新作『WILD 7』エキストラ大募集!!
http://www.kitakyu-fc.com/whatsnew/index.php?id=49

僕の脳裏にはただちに「黄金の新幹線」終盤のパーティシーンが浮かんでくる。
ワイルドたちの本質は「猟犬=ドーベルマン」という鮮烈なイメージが刻みつけられる名シーンだ。
ぜひ映画で再現してもらいたい。


望月ファンが集れば、「ワイルド7の実写映画化はまだかな?」という話題が必ず出るものだが、それがいざ現実になると、ある種の怖さを感じるもの。
みんなこの作品が大好きで、映像化への期待がとても大きかったから。


もうクランクインということは、あの隊服、ガン、バイクがすでに完成しているということだ。
果たして、ちゃんとしたものが出来ているのだろうか...?

隊服は、かつてのテレビ版のように茶色だったりということはないだろうが(オリジナルは黒)、腰回りの装備(無線機などが内蔵されている設定)を「ワッカ」で代用するような簡略化した造りじゃダメだ。
あの部分は、ジャケットと別体で立体的な構造のはずだから、それをキチッと再現しないと。

設定は現代なので無線機(マイク・イヤホン部分)はヘルメットに内蔵となるだろうから、腰回りの装備の解釈は変るかもしれない。

しかし、あの腰回りの装備は隊服のデザイン上のアクセントだし、007的な「各種秘密装備」は少年の心をくすぐる要素なので、ぜったいに再現して欲しい部分である。

隊服の各所には、現代的にプロテクターが装備されるんじゃないかと思っている。


次にヘルメットだ。
現代の目で見ると気になるのが、チンカップ
飛葉たちのヘルメットには、三億円事件のモンタージュ写真のようにチンカップが装着されているが、チンカップは現在では危険性があるということで、自転車用のヘルメットでも許可されていない。

だからといってチンカップなしじゃ、しまらない。
そこでだが、すぎむらしんいち版ワイルド7トリビュートのように、チンガードを付けてみてはどうだろうか?
なかなか凄みが出てカッコイイと思うし、現代的なイメージも出ると思う。

すぎむらしんいち版ワイルド7トリビュート


今回の映画で、初めて「みそっかすのユキ」が映像化されるのでは?と期待しているのだが、他の隊員たちと違ってユキは基本的にノーヘルである。

これには「女性キャラだから顔を見せたい」ということのほかに、「髪の動きで躍動感を出したい」という表現上の理由もあると思う。

望月先生は、女性キャラのパンツの「シワ」の作画を決して弟子には任せず、すべて自分で描かれたそうだが、それは「女性のヒップの張りを表現するには、微妙なシワの表現が必要だから」という理由なのだそうだ。

そういう先生だから、ユキのノーヘルも「表現上の理由」というのもあり得ると思う。

ノーヘルでのバイクスタントは難しいかもしれないが、「ミッション・インポッシブル2」や「マトリックス・リローデッド」ではノーヘルでやっていたし、この2作にはない「揺れる髪の毛でによる躍動表現」にぜひ挑戦してもらいたい。

最高人気エピソード「地獄の神話」終盤の、モンスタートレーラー戦(画像)のような!

ワイルド7ユキYuki1
ワイルド7ユキYuki2


コスチュームに関する話だけで、こんなに長くなってしまった。
ガン、バイクに関する意見は別記事にしたい。

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瑛太主演でワイルド7が実写映画化!

以前から「話は来てる」と聞いていたが、ついに実写映画化が発表!
これは望月三起也ファンとしては大朗報。めでたい!


瑛太がダークヒーローに!悪党警察官役でバイクアクションも!「ワイルド7」が実写映画化決定(シネマトゥデイ)
http://www.cinematoday.jp/page/N0030626


主役の瑛太は大型二輪免許所持者であることが起用の要因だそうで、本気でバイクアクション映画を撮ろうとする姿勢が感じられる。また、脚本を1年近く練り込んだというあたりも期待できる。

以前、望月先生は「俳優にこだわりはない。バイクをちゃんと7台、そして破壊用にもう1セット揃えられるかどうかがポイント」と仰っていた。

なかなか高いハードルだけど、今回これがクリアされたということなのだろう。
「ミッション・インポッシブル2」を超えるようなスーパー・バイクアクションを期待したい。


ワイルド7の魅力はバイクアクションだけじゃない。

ワイルド7の本質は、望月先生が一番お好きだという映画ジャンル「西部劇」にあると思う。

「現代版・西部劇」。それがワイルド7。

バイクは馬、ショットガンはカウボーイの鞍につけられたサドルガン。
襟の警視長バッジは、臨時保安官のバッジ。

臨時保安官に採用されたアウトローたち。その現代版がワイルド7というわけ。
この雰囲気を出せるかどうか。期待したいね。


望月先生は、「キング・オブ・少年マンガ」だと思う。
ハードでワイルドなストーリーが展開されるけれど、キャラクターたちの姿、仲間意識は実にすがすがしい。けっして陰鬱な作品ではない。

これぞ、少年マンガ。こうした「少年マンガらしさ」をきっちり表現してもらえたら嬉しいね。


そして、望月キャラクターの多面性をうまく表現して欲しいと思う。
ハードで冷酷な面と少年らしさが同居する最年少リーダー飛葉。
怪力巨漢のキャラクターだが、けっして「カレー大好きキレンジャー」ではないヘボピー。

アクション一辺倒ではない、味わい深い原作のテイストを引き出して、世界に誇れる最高のアクション映画を作って欲しいね!


以下は、「月刊望月三起也」に私が投稿したワイルド7関係の記事です。
ぜひ読んで、この名作を思い出して下さい。


「植物園の戦い」から望月アクションの魅力を探る
http://wild7.jp/3866

ワイルド7「死神を処刑」
http://wild7.jp/2807

ワイルド7「魔像の十字路」
http://wild7.jp/1956

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月刊望月三起也の作品紹介に「生還」が掲載

「作品紹介」の方には、久々の登場になります。
月刊望月三起也 作品紹介「生還」
http://wild7.jp/4986

この「生還」という作品、30年あまりも単行本に収録されなかったため、知っている人も少ないんじゃないかと思います。でも、あの土山しげるさん(当時カエルぷろに在籍)が特に思い出深い作品としてあげているそうで、先生の「知られざる名作」と言えるかもしれません。

2003年に出た単行本は現在絶版中のようで、下記リンク(Amazon)等から中古で手に入れていただくしかないですが、ぜひ多くの方に読んで頂きたい素晴らしい作品です。

望月先生のライフワークは戦記物であるといって良いと思います。また「ワイルド7」など現代物の作品にも軍隊や軍に関係する組織(軍需産業等)が多く出てきます。

こうした作品の中で一貫して描かれる「ミリタリー」なものに対する先生の見方。態度(嫌悪)。僕はそこに共感し、強く魅かれるのです。

この「生還」は、「ミリタリー」のうちの「組織」の問題にフォーカスを当てています。そして、他の作品より、メッセージ性が強烈なのが特徴です。

先生の作品は、メッセージを正面から声高に叫ぶようなことはせず、あくまでも「物語」を優先させる傾向がありますが、この作品の掲載誌は「平凡パンチ」という青年誌だったこともあり、普段の戦記作品よりもメッセージ性が強く、「心理劇」と呼べるほど人間の内面を扱った作品になったようです。

そういう点で、この作品を「異色作」と呼ぶこともできると思います。


私の言いたいことはすべて「作品紹介」の中に書いてありますが、特に強調したいのは、この作品はテレビドラマや舞台の原作に使えるのではないか、ということです。

横井さん、小野田さんという誰でも知っている事件がベースですし(掲載時、小野田さん事件はまだ起きていませんが)、ここで描かれる「組織と人間」「人間の自由」の問題は、人間社会には普遍的なものです。

どなたか関係者の方、この作品の映像化、舞台化に取り組んでいただけないでしょうか...?

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望月三起也先生の新作「バサラ戦車隊」連載開始!

「W7」休載中ということで先生の新作に飢えていた我々望月ファンが待ち望んでいた日が、ついにやってきた。

明日(9/13)発売の「月刊アーマーモデリング 2010年10月号」にて、先生の戦記物の新作「バサラ戦車隊」がいよいよ発進!である。

この作品タイトルは、先生が大好きと仰る「サハラ戦車隊」から取られたものだろう。

望月先生のライフワークと言えば、やはり戦記物。「原点回帰」といったところだろうか。

「サハラ戦車隊」と言えばM3中戦車が大活躍するが、先生の「バサラ戦車隊」では八九式中戦車が主役メカになるらしい。どちらも中戦車と名が付くが、わが八九式は米軍のM3軽戦車よりも軽量なのである。

作品の舞台はソ連侵攻後の満州となるらしい。はてさて、どのような「闘い」が描かれるのだろうか。
恐らく度胸と知略とチームワークと運...だろうなぁ。八九式の戦闘力では。

「月刊アーマーモデリング」では、11月号から八九式のモデルが何号かに分けて添付されるらしいから、連動企画なのだろう。こういう試みは面白いと思う。漫画のシーンのジオラマが作れるし、望月先生みずから漫画をジオラマ化した作品を見てみたいものだ。

「サハラ戦車隊」についてだが、「最前線」執筆時(1963年頃)はM3中戦車の三面図がなく、そのスケッチをするために「サハラ戦車隊」を何度も観に行ったそうだ。インターネットで何でも調べられる現代からは想像もつかない話だ。若い読者は、この連載でそんな「戦記コミックの先駆者」の情熱に触れて欲しい。

望月先生と言えば、タミヤの新製品をすぐに作品に登場させることでも知られる。
となると、ソ連のBT-7が敵役で出てきそうな気がするのだが、どうだろう。


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松本零士さんの「衝撃降下90度」と「戦闘機シリーズ・震電」

望月先生の作品で最も有名なのは間違いなく「ワイルド7」だが、先生はデビュー直後の60年代から90年代に至るまで戦記コミックを描き続けて来られた、「戦記コミック」の代名詞的存在でもある。

僕の個人的見解では、戦記コミックの代表的作家は、望月先生松本零士さん小林源文さん。そして系統はまったく異なるが、水木しげるさん...となる。

小林源文さんは望月先生の「最前線シリーズ」文庫判の後書きで、子供時代、「最前線」など望月戦記コミックの熱心な読者だったと述べておられた。

松本零士さんも、望月戦記コミックの影響を強く受けているようだ。
そう思わせる作品、それが今回取り上げる「衝撃降下90度」である。

「衝撃降下90度」は。ビッグコミックオリジナルの1975年11月20日号に掲載され、少年サンデーコミックス「戦場まんがシリーズ」第5巻のタイトル作品として刊行された作品で、同シリーズの代表作のひとつとされる人気作品のようだ。

ちなみに僕は小学校高学年時代、このシリーズに大いにハマり、今でも松本さんの最高傑作は「戦場まんがシリーズ」だと思っている。30〜40ページ前後の一話読み切りのスタイルが松本さんにピッタリのフォーマットであり、その手腕が天才的に発揮された作品群だと思う。

次に望月先生の「震電」について解説しよう。

この作品は少年ブックの1964年11月号の付録に掲載され、「隼」という作品の単行本に収録された一話読み切りの短編である。その後得意となるメカものの習作的な作品で、飛行機を苦労しながら描かれたそうだ。
近年では、2003年にぶんか社から発行された「望月三起也戦記コミック傑作選Vol.1 航空戦記コレクション シルバー・ハンターー銀翼の狩人ー」に収められている。


では、「衝撃降下90度」と「震電」の関係を見ていこう。

まず、状況設定と登場人物から。

これがまず「同じ」といっていい。

大戦末期の日本。既存の技術(レシプロエンジン機)で世界最高の戦闘機を作ろうとする、2人の若者の物語。2人は幼なじみだ。

望月作品では、下士官のパイロットと士官のパイロット(ともにテストパイロット)で、士官パイロットの中野少尉は航空機の技術にも明るく、設計者からも一目置かれる存在。
下士官パイロットの城山一飛曹は事故で片足を失って義足となり、現在は地上勤務に就いているが、いつか大空に舞い戻ろうとリハビリを行い、機会を窺っている。

松本作品では、テストパイロット(台場)と設計者(山越)の組み合わせ。
台場は急降下テスト中の分解事故を繰り返し、足、腕、眼...と身体の一部を次々と失い、義足、義手の身となりながらも、音速突破に執念を燃やし、気弱になる山越を叱咤激励する。


テスト飛行中に戦闘に巻き込まれる部分も共通するし、松本作品ではクライマックスとなる、急降下中に操縦不能になるシーンも望月作品に登場する。


両作品で最も異なるのは、登場する機体である。
これは作品の「もうひとりの主人公」とも言える存在。

望月作品では、タイトルどおり「震電」
実在の試作戦闘機である。

ここで重要なのは、震電はプロペラが後方にあるレイアウトのため、脱出時にプロペラに引っかかる可能性が高い、テストパイロットにとって非常に危険な機体だということである。

作品中でもこの件について言及があるが、テストパイロットが主人公の作品を盛り上げる重要な要素だし、「史実」の重みもある、とてもうまい設定だと思う。

松本作品では、後付けで「キー99」とネーミングされた機体が登場する。
これはフロントにタンデムでエンジンを搭載し、二重反転プロペラを駆動するという双発の試作戦闘機だが、松本さんが創作した完全な架空機である。

松本さんの大戦期の戦記コミックに、まったくの架空機が出て来るのはこの作品だけだと思われる。

つまりこれは非常に珍しいことなのだが、その理由としては、ここで震電を出すと「震電」と完全に似てしまうため、という以外の理由が思い付かない。

「ピストンエンジンという既存の技術で最高の戦闘機を作る」という目標、「テストパイロットに危険なプロペラ配置」というストーリー展開に有利な機体デザイン、そして何よりも「史実」という重み。

すべてが震電を登場させることで利用できるのに、なぜ架空機だったのか

この「キー99」は、フロントタンデムエンジンというモノ凄いレイアウトだが、これは震電を前後ひっくり返した...というより、「震電とは違う既存のレイアウトの中で、究極のデザインを」という発想だったのだろうと思う。

僕は、この機体は松本さんなりの「震電」へのオマージュだったと理解している。


両作品を比較すると、同年の生まれである両作家の出自、個性の違いがはっきりして面白い。

松本さんの父親は陸軍のパイロットで、末期には四式戦闘機「疾風」にも乗っていたそうだ。テストパイロットの経歴もあるそうだから、相当なものだ。
しかも「敵だった国の飛行機に乗れるか」といって航空自衛隊入りを拒否したという硬骨漢だったらしい。
このあたりの姿(パイロットの意地)が「衝撃降下90度」の台場や「紫電」の服部あたりに色濃く投影されているように感じる。

一方の望月先生の父親は宮大工という市井の人(従軍したのかどうかは知らないが)。

望月戦記コミックの大きな特徴としては、「市井の人が主人公」というのがあげられるだろう。
ほとんどの主人公が「戦争に巻き込まれた市井の人」であり、戦争のプロフェッショナルではない。

そして、市井の人が主人公たちと絡むストーリーがとても多い(ほとんどがそうではないだろうか?)。「震電」でも、中野少尉の病気の妹と、城山一飛曹の交流が描かれている。

これは戦記コミックのストーリーを作成する上で制約となり、ストーリー作成の難易度が上がると思われるが、望月先生の場合、「戦争と市民生活」というテーマが基本にあるようなので、これは当然のことなのかもしれない。

松本さんと望月先生は同年のお生まれだが、望月先生は横浜大空襲という惨劇を実際に体験されたが、松本さんは「戦場」を見ていない、という違いがある。

松本戦記コミックは「戦争」そのものよりも、「兵士の心情」にフォーカスされており、ファンタジックな要素も強い。望月作品の方は、先に述べたように「戦争に巻き込まれる市民」がストーリーの中心になり、視点が違う。

お二人の戦争体験の違いが作品に反映されているように思われ、とても興味深い。

余談だが、小林源文さんの父親は憲兵だったらしい。
「戦いは義務」という描かれ方が多いが、さもありなん....そんな印象である(笑)。

やはり「父親」というのは、作家にとって大きな存在ということなのだろう。


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後方にプロペラが配置される、震電の機体レイアウト

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飛鳥次郎風二枚目の中野少尉と、やんちゃ坊主の城山一飛曹

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病身の妹を思いやり、中野少尉を出し抜いて震電に乗り込んだ城山一飛曹。
この辺の流れは「メコンの落日」に影響を与えている気がする。

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急降下中に操縦不能となってしまう震電!

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1964年の段階で十四年式拳銃をしっかり描けているとは、さすが望月先生だ

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ここから「衝撃降下90度」。急降下中に操縦不能となってしまった「キー99」

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この作品タイトルの入り方が「戦場まんがシリーズ」の特徴であり、最高に素晴らしい!

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片足を失って入院中の台場を見舞う山越

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ジェット機もロケット機も間に合わない。ピストンエンジンで最高の戦闘機を!

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己の執念のため、ラストフライトに臨む台場。執念の鬼となった彼の姿は、「空の死神」と化したベルリンの黒騎士、リヒターに通じるものがある。彼らの帰るところは....

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「ゆうれい将軍」と彼のガン(MAT49&ルガーP08)

今月の「望月マニ也」は、TAKUYAさんの「ワイルド7・メンバーのハンドガンたち」だ。望月作品に登場するガンは、それを手にするキャラクターを引き立てるデザイン、性格のものが選ばれている。そのことが改めて良くわかる内容だった。

「ワイルド7・メンバーのハンドガンたち」
http://wild7.jp/4019

先生の作品ではガンのキャラクター性が重視されているので、考証面は二の次になっている。しかし考証・リアリティにとらわれ過ぎると絵的に面白い作品にならないので、この考え方は正しいと思う。「個性的なガン」は望月作品の魅力にもなっている(子供にも分かりやすい)。

さて、ここで私も「望月キャラクターとガン」というテーマで考えてみたい。ただし、私の場合はサブキャラクター(悪役)の方だ。

まず、思い浮かぶのが「誘拐の掟」に登場する「ゆうれい将軍」の得物、「MAT49」「ルガーP08」だ。


「ゆうれい将軍」は、ワイルド7の大ファンでもある東本昌平さんも「好きなキャラ」にあげている名悪役。彼は常に冷静な知能犯であり、犯罪のスケールは国家レベルという大物。手口は実に鮮やかでスマート、憎いほどの「役者」である。「神出鬼没の大物」というイメージをシンプルに表したネーミングも素晴らしいと思う。

そんな「ゆうれい将軍」が使用したサブマシンガンが、フランス製の「MAT49」。このガンは元々小型だが、マガジンハウジングが前方に畳め、ストックも伸縮できるので隠すには最適だ。そして何よりも、フランスのエスプリ(?)を感じさせる端正でシンプルなデザインが「ゆうれい将軍」のキャラクターにぴったりである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/MAT_49

「ゆうれい将軍」はイキナリこれをぶっ放して、変装した警官を射殺。極めて印象的にハイジャックの現場に登場する。そしてこのガンを使ってタラップ車のドライバーを脅迫、まんまと空路で逃げ失せる。一連の行為に使われたこのガンの印象はとても強く、これにはガンのデザインも一役買っていると思う。

そしてピストルは「ルガーP08」。このガンほど気品に満ちたデザインのピストルはないだろう。「ゆうれい将軍」が持つのにまさに相応しい。気品はあるが、見る角度によってはゴツさもある。この2面性も「ゆうれい将軍」のイメージに繋がるものだ。

「ゆうれい将軍」と彼のガンはお互いに引き立て合っており、両者のイメージが重なり合うことで、名キャラクターが生まれたのだと思う。

ゆうれい将軍と彼のガン








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ワイルド7トリビュート第6弾 すぎむらしんいち版 見参!(「地獄のハイウェイ」)

昨日発売のヤングキング新年号で、すぎむらしんいちさんのトリビュート第6弾がお目見えした。

ロジャー・ゼラズニイのSF小説「地獄のハイウェイ」が下敷きになったストーリーで、その世界観にワイルドを乗せるのは面白い試みだと思う。僕は充分楽しめた。

復讐の女性戦士イサームというキャラクターは、すぎむら作品のキャラだそうだ。どうりで存在感があるわけだ。

飛葉が「優しさ」を見せるシーンがあるのだが、とても良かったと思う。これまでのトリビュートでは、飛葉の気の利いたセリフは無かったようなものだが、このシーンには「飛葉らしさ」が出ており、ファンとしてはとても嬉しかった。

「地獄のハイウェイ」の件だが、悪党のセリフの中に「地獄のハイウェイへようこそ」とあるし、荒涼とした無法のハイウェイを悪党がドライビングする特殊車輌が行き、道中で襲撃を受けてバトルになる....と言ったあたりがそれだ。オリジナルではペストの血清の運輸が任務だったが、今回はテロリストの細菌兵器を輸送していたようだ。

「地獄のハイウェイ」は、悪党が釈放を条件に国家的任務に就くという話だが、「超」が付くほど個人主義的な悪党が、危険だが社会的価値の高い任務とどう向き合って行くのか、逃げるのか、それとも生命の危険をおしてまで遂行するのか。そのあたりの心境の変化など、非常に読みごたえがあった。

悪党は生まれながらではなく、「環境」によってそうなる。孤独で誰からも期待されていないから個人主義者になる。結果、能力があってもそれが社会に正しく還元されず、犯罪に活かされてしまう。このような悪党に自己実現の場(任務)を与える話が「地獄のハイウェイ」であり「ワイルド7」だ。

荒涼とした無法のハイウェイは、悪党が生まれ育ったこれまでの「道」のメタファーと受けとめて良いだろう。

疑問もなく「義務」のために闘うエリートとは違い、個人主義者の悪党が「正義」の任務をこなすようになる。人との絆を取り戻していく。「成長」していく。そのプロセスが面白いし、読者の深い共感を生むのである。

今回、ヤングキング編集部よりメッセージがあり、このトリビュートプロジェクトはさらにパワーアップし、今後も進行していくそうだ。新年号から縁起が良い話で嬉しい。期待したい。

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トリビュート第4弾!! 神崎将臣編

ワイルド7の熱狂的なファンであり、ヤングキングの編集さんに自ら連絡を入れてトリビュート参戦を申し入れたという神崎将臣さんの登場だ。その意気や良し!

作品のオチは、「二代目ワイルド7」で、メンバーの「飛葉大陸」「ユキ」ら(外見ソックリ)の名はコードネームというもの。そう来たか!

...となると望月先生による外伝作品「ワイルド7外伝・優しい鷲」が思い浮かぶ。キング掲載時しか読んでいないので細部は覚えていないが、外見ソックリのメンバーを集める部分や、本作のラストで空港が舞台になるあたり「優しい鷲」に似ている部分があるようだ。

敵組織の名は「緑の狐」だが、これは「優しい鷲JJ」の「赤いキツネ」「緑のタヌキ」をもじったものだろう。「ワイルド7外伝・優しい鷲」はJJ連載開始の「前夜祭」的な位置づけだったので、今回のトリビュートは「外伝」と「JJ」を意識したものだったのかもしれない。なかなかマニアックだ!

「ワイルド」たちを見て悪人が叫ぶ「都市伝説のはずだ!!」は燃えゼリフだね。この辺も「外伝」を彷彿させる部分。「外伝」では、ワイルドの「幻影」を見たSS自衛隊の連中が腰を抜かして逃げ出すシーンがあったと思う。潜水艦基地や偽装原子力船をぶっ潰された、その記憶が秘熊一派のなかに強く残っていたのだろう。ワイルドのファンとしては、「無理もない!」と思ってしまう。

ここでふと頭をよぎったのが、司馬遼太郎「燃えよ剣」の最終局面。函館市街を単騎で進む土方は、長州兵士に誰何される。「名か」ふと考えた土方は「函館政府陸軍奉行」ではなく「新選組副長土方歳三」と答える。これを聞いた官軍は腰を抜かす。

すでに近代戦の時代になっていたが、「新選組」の名は伝説化していたんですなぁ...。いや〜燃えるシーンだ。そして、これは上記の「外伝」のシーンとイメージがピッタリ重なってしまう。またもワイルド7=新選組のイメージが...燃えるなぁ(笑)。

トリビュートに話題を戻そう。

今回の7人にもチャーシューがいないのである。「7+1のみっそかすユキ」で良いはずなのだが...。東本昌平版もそうだったし、「外伝」もそうだったしそういう流れなのだろうか。しかし、チャーシューはその実力や詳細はプロフィールなどが謎に包まれており、どうしても掘り下げて欲しいキャラクターなのだ。

掘り下げて欲しいのは主人公である飛葉もそう。望月作品の主人公の中で、飛葉ほど「自分語り」をしないキャラクターはいないと思う。飛葉の闘う動機は何なのか。悪への憎しみ、草波との信頼関係、恩義などが考えられるが、それらは明確に語られていない。最初にスカウトされた時、草波とどのような契りを交わしたのか。

飛葉はどんな犯罪を犯したのか。どんなワルだったのか。婉曲的にしか語られていない。飛葉の父親はどういう人物だったのか。飛葉の圧倒的な戦闘力、冷徹な判断力はどこでどのように身に付けられたものなのか。中学生時代に「外国で傭兵暮らし」レベルの経験があると思われるが、まったく説明がない。

意外かもしれないが、飛葉は謎の多い難解なキャラクターなのだ。だから、もっともっと掘り下げられるはず。トリビュートには、こういう未解明の部分に正面から切り込んで欲しいものだ。

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トリビュート第3弾!! 小林まこと編

書こう書こうと思っているうちに第4弾が本日発売。慌てて書きますwobbly

小林まことさんのトリビュート、個人的にはこの4作の中で最も楽しめた。
元より少ないページ数で、どう作品として成立させるかがポイントのひとつだが、小林さんは思い切ってストーリーを棄て、「全編予告編マンガ」という形態で応えてきた。さすがである。

「1・2の三四郎」のキャラクターをワイルド役で登場させ、小林さんが思う「ワイルド7名場面集」を「予告編」と称して演じさせる。小林ファンはクスッとなるし、ワイルド7ファンはニヤリとするし、ワイルド未見のヤングキング読者にはワイルド7への優れたガイダンスになる。一挙三徳の素晴らしいアイディアだ。

小林さんは望月先生のお弟子さんのひとりだが、このページをめくらせる力、筆力は師匠譲りの素晴らしいものだと思う。読者に考えるスキを与えず、自らの作品世界に引きずり込んでいく。マンガへの真剣さが読者を引き込むのだと思う。そして、キャラクターの強烈なバイタリティー。これも師匠譲りのものだろう。

そう言えば三四郎のヒロインは「志乃」というのだが、これは志乃ベエから来てるのだろうか。

トリビュートの中の「豪華キャラクター陣」の中にマイケルが混入しているが、ひょっとして「ブラッキー」(軍八の飼い猫)の役なのだろうか...?他に考えられないが、ブラッキー役のマイケルは想像しただけで大笑いである。

小林版ワイルドの中では両国役が一番可笑しかった。私はこのキャラクターを知らないが、いかにも質が悪そうなヤツで、両国が持っている異常性、タチの悪さ(普段は隠されている)をうまく表現出来ていたと思う。この辺の感覚は、実写化された俳優が原作イメージに合うかどうかを議論しているようで面白い。この両国役は、外見は違うが(ある部分の)イメージは合っている、という感じで新鮮だった。

作品中一番笑ったのが、ブカーと煙草をふかしながらワイルド7の原稿を仕上げる「小林まこと」に、矢印で「18歳」という描き込みがあった部分。もう時効だろうが、望月先生の管理責任は話題になり得る。このシーンを読んだ時の先生の表情を想像しただけで楽しい。

小林さんには「予告編マンガ」の第2弾もぜひお願いしたい。今回紹介されたシーンとは別の切り口の「名場面集」もきっとあるはずだ。

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