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ワイルド7の「序章」...チームが完成するまで

ワイルド7は、いわゆる「ならず者部隊」の系譜に属する作品である。収監され抑圧された状態にある「ならず者」たちが、自由と引き換えに、困難だが価値のある作戦に駆り出される...というストーリーの類型がある。悪人(ワル)は一般的に利己的な個人主義者である。誰からも期待されず、誰を頼りにもせず、また、他人を裏切ったり、裏切られるなどして犯罪に堕ちていった者たち。こうした自分勝手な連中が、自分の自由のためとはいえ、崇高なミッション遂行のために、最も大切な自らの命を懸けて戦う道を選ぶ。そして自己犠牲の精神を発揮して斃れていく....。これがこのタイプの作品の魅力である。

こうした作品のキモは、「チーム」が完成するまでの過程にある。利己的で個人主義者のワルたちが、ひとつの目的を共有し、お互いを信頼しあう「チーム」の一員に成長する。ひとつのチームとして機能するようになる。そこをうまく描ければ後半の「作戦」シーンが一気に盛り上がる。結束さえすれば、ワルの方が大きなパワーを発揮するものなのだ。その根拠は明確ではないが、創作作品の世界ではそういうことになっている。この設定にはなぜか強い説得力があるのだ。近年の少年マンガで、このパターンが大成功した例は間違いなく「スラムダンク」だろう。そして、このパターンの先駆者であり、最も代表的な作品はワイルド7なのである。

第1話「野性の7人」のショッキングな冒頭シーン。リーダー飛葉の号令のもと、一糸乱れぬ連携で、凶悪な銀行強盗犯を速やかに「退治」する7人の姿を見て、隊長・草波は叫ぶ。

できた!!
みごとに わたしの 待望の組織はできた!!

(草波/野生の7人)

しかし、この時のワイルドは、まだ草波の単なる手兵であり、「犯罪者」という弱みを握られたスペシャリスト集団に過ぎなかった。草波はそのような組織を望んでいたのだが...。

この後、ワイルドと草波は、M.Cプロ事件バイク騎士事件という2つの難事件に直面する。その戦いの過程で彼らは怒り、苦しみ、悩み、命令違反を犯し、ぶつかり合う。そして、「真のチーム」になって行く。その有り様が、実にしっかりと描かれているのが素晴らしいのである。

強いチームに必須の条件とは何だろうか。スペシャリストの寄せ集めとの違いは何だろう...?
ひとつは、お互いを信頼しあっていること。「友情」という奴だ。
そしてもうひとつは、「志」を共有していること。チームの「志」が存在し、メンバーがそれを共有していることだ。
この2つがあれば、メンバーはミッション遂行のために、死をも恐れぬ行動を取ることができる。隊長の命令があってもなくても...。

最初の命令違反は飛葉だ。M.Cプロの大岩雷太とのココナッツ・ゲームの中断と、単独でのM.Cプロ本社ビル潜入である。自分の失敗を認め、それを自ら解決しようとする自発的な行動だった。
次の命令違反は、飛葉を除く6人だ。要塞のようなビル内で窮地に陥っている飛葉を見捨ててデモの鎮圧へ向かえという命令が下るが、ヘボピーを筆頭にUターン、飛葉の救援に向かう。
その次は5人だ。入院中の八百とバイク騎士に締め上げられちゃったチャーシューが不参加だったが、この行動はワイルド全員の総意と見て良いだろう。テレビ局を支配下に置き、国民の意識をコントロールしようと目論むテレビ局幹部の黒松に対して、恩人・成沢の弱みを持つ草波は毅然とした対応が出来ない。悶々とする飛葉たちにイコが叫ぶ。

結果は問題じゃないわ!!
正しいとおもったら すぐ行動にうつす!!
それが男じゃないこと

(イコ/バイク騎士事件)

こんな説教臭いところに居られるか、などと言いながら別々に店を出る5人。その後、ハイウェイを軽井沢に向かう飛葉の姿があった。

まさにイコのいうとおりだぜ...
黒松みたいなゴキブリは たたきつぶすべきだ!!
隊長の草波がなんといおうと....
世間がなんといおうと....
おれたちが どうなろうとなっ!!

(飛葉/バイク騎士事件)

やがてオヤブンが、続いてヘボピーが、世界が、両国が飛葉に追い付く。

どうやら 黒松をつるしあげたいってところで
ワイルド7の意見は いっちしたらしいぜ...

(飛葉/バイク騎士事件)

飛葉救援の命令違反では、「友情」が命令に優先された。
黒松退治の命令違反(命令もないのに退治に出動)では、7人独自の「志」が明確化し、それが命令に優先された。
ここにおいて、ワイルドの7人は「友情バカ」となり、「命令があろうが無かろうが、悪は許さない」という「志」(自らの行動原理)を獲得する。ここに真のワイルド7が誕生したのである。

いや、正確には、こうしたワイルドの変化を草波が受け容れ、一度はバッチを叩き返した飛葉がワイルド復帰を決めた「誘拐の掟」の冒頭部分が、その誕生の瞬間になる。

バイク騎士事件の解決を高く評価した成沢検事だが、あまりにも反抗的だった7人に代わり、100人規模の新たな部隊を創設するプランを草波に語る。それに対して草波は、

しかし隊員が100人でも 前の7人には
とても かなわないでしょう....
あの7人は わたしが苦労して何千人の中から集めた...
えりすぐれた部下たちだった...いやわたしの仲間だった

(草波/誘拐の掟)

草波の意識は、7人を「仲間」と呼ぶところまで変化している。2つの戦いの過程でワイルドの7人の考え方も変わったし、隊長の考え方も変わったのだ。ゆうれい将軍のハイジャック事件に直面した草波が、飛葉に訴える。

このバッジ....
わたしのためじゃなく...
97人の善良な市民のため...
ぜひ もう一ど つけてくれ!!

一度はワイルドからの離脱を決意した飛葉だが、昔の縄張り横浜(ハマ)にはもう彼の居場所はなかった。自分の帰る場所はワイルドしかないことを自覚する飛葉。

横浜(ハマ)は おれを必要としねえが...
あんたは おれを 必要なんだろう?

(誘拐の掟)

これが真のワイルド7誕生の瞬間である。

命令違反によってチームは結束し、新しいステージに上がった。そしてそれは、6台の、あるいは5台のバイクの爆走シーンで表現されている。そして彼らのゴーグル、グラサンの陰にはキラリと輝くものがあった。これはもう、男の胸が最高にアツくなる名シーンである。バイクは西部劇の馬の代用であり、1人に1台。そして操縦者の顔が見える。しかしゴーグル、グラサンで男の涙は隠されるのだ。クルマではこういう表現は決してうまく出来ない。このシーンはバイクだからこそ感動的に描けるのであり、これこそがワイルド7なのだ。


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ぶんか社文庫判ワイルド7「野生の7人」

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