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対戦車ライフルの使用とカスタマイズ

ワイルド7は後世の漫画・アニメ作品に広範な影響を与えた名作だが、その偉大な功績のひとつとして「対戦車ライフルを漫画作品に登場させた」ことがあげられるだろう。「コンクリート・ゲリラ」(1970-71)において飛葉大陸が米軍車両の狙撃に使用したのがそれだ。現在の漫画、アニメ、ゲームにおいて、対戦車ライフル(超長銃身のライフル)は銃器キャラクターの定番の一つと言っていいが、それらすべての元祖がワイルド7だと考えている(ゴルゴも対戦車ライフルを使用しているらしく、どちらが嚆矢であるのか今後研究していきたいと思っている)。

ワイルド7執筆時と現在とでは、ガン・ミリタリー関係の情報量がまったく異なっている。それを背景に近年のアクション漫画には多くの銃器が登場し、描写も細密だが、どこか「銃器図鑑からの引き写し」という感も無きにしもあらずだ。情報量が多くなると情報の消化に追われ、創意工夫やイマジネーションが低下するという傾向があるのではないだろうか?

しかし、望月先生は違う。警察機関の隊員が対戦車ライフルで長距離狙撃を行うという、現実世界を含めても前代未聞の先駆的描写がされただけでも画期的であるが、作品に登場した対戦車ライフル(イギリス軍のボーイズ対戦車ライフル)が、かなりのカスタムモデルであり、「銃器図鑑からの引き写し」では決してないのだ。

対戦車ライフルは第2次世界大戦の序盤までは有効な兵器だったが、戦車の重装甲化が進んだ中盤以降は兵器としての有効性を失い、その後は長らく「忘れられた兵器」として歴史の中に埋もれていた。長大な射程と強力な破壊力を持った大口径ライフルの必要性が再認識されたのは1980年代以降であり、「対物ライフル」として開発が再開され、軍、対テロ特殊部隊、警察(SWAT)などに配備されるようになった。飛葉の狙撃から10年以上も経ってからのことだ。

飛葉が使用したボーイズは、ナナハンでの運搬に考慮し、ガンを上下に分割、積載出来るようになっており、ストックはオリジナルだ。また、キャリングハンドル兼スコープマウントを中央上部に配置したためボックス型のマガジンが装着できなくなり、一発ずつ手で装弾する仕様になっている。速射性より運用面(可搬性)を重視したカスタマイズであり、説得力がある

このライフルは、「谷間のユリは鐘に散る」(1973)で、ユキのドゥカティに搭載されて再登場する。第2次世界大戦でイギリス軍はこのガンをユニバーサル・キャリア(キャタピラ式汎用小型運搬車)に搭載したが、ワイルド7ではバイク、しかも紅一点のユキの得物として登場する。物凄いイマジネーションである。

さて、このバイク搭載型ボーイズだが、狙撃仕様とはまた異なったカスタマイズが施されている。バイク上での取り回しに考慮したと思われるが、ストックがピストル型グリップに変更されている。ボーイズの駐退復座機(射撃時の反動を軽減するための装置)はストック部分に格納されている(YouTube動画を参照)ため、バイク搭載型では行き場を失った駐退復座機が省かれているようだ。その結果、ガンの反動が大きくなったことが、キチッと描写されているところが何とも素晴らしい。ユキが射撃した後、ドゥカティが ズズズ と反動で後退しているのだ。飛葉の狙撃シーンと比較して欲しい。

(畏れながら)ひとつ注文をつけるとすると、作中でユキがスコープを使用したシーンがないので、これを取り外してオリジナルのボックス型マガジンを復活させても良かったのではないだろうか。バイクを操縦、戦闘しながら一発ずつ弾丸を取りだし、装填するのは非常に困難だろう。ちなみにユキの弾丸装填シーンや、巨大な弾丸をどこに格納しているのかについての描写は無い(飛葉使用時には描写がある)。


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ボーイズ対戦車ライフルを小脇に抱える「リネット・ ビショップ」(ストライクウィッチーズ)

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コメント

毎回、ネタの内容が濃いですね!関心いたします。

「対戦車ライフル」で印象的なのは、やはり「谷間のユリ~」のこのシーンですね。
館が崩れ落ち、犯人たちが滑り落ちていくところ。
館の壊れる描写がすごい。屋根瓦の一枚一枚、レンガの崩れ方がすばらしいですね。

しかし、いつも気になるのは「飛葉」がロープの上からバイクごとどうやって、下の駅に降り立ったのか?ということだ。

投稿: RYU | 2008年12月16日 (火) 22時06分

いつもありがとうございます。
今日は望月先生の70歳のお誕生日ですねnote

ロープからの降り方ですか。今までまったく気にして無かったナァ。乗れるんだから降りれるんじゃないかと(笑)。

細かい疑問点としては、人質の捕縛状況をどうやって飛葉が知り得たか?ということ。人質になっている八百が隊服の無線のスイッチをオンにしていたとか...ですかね?

投稿: Grünherz | 2008年12月16日 (火) 22時16分

いや、あの人質の「状況」
どうみても、「両国」と「エメロンちゃん」はいいとしても、「ばあさん」と「八百」はやばいでしょう!
手首完全にいっちゃってます。

先生、きょうが誕生日ですか。
しかも70歳とは、若いですね!

投稿: RYU | 2008年12月16日 (火) 22時55分

ワイルドの隊服下部のベルト状の部分って、円形のアイテムが埋め込まれていて、無線の送受信が出来るじゃないですか。

僕の解釈では、八百は捕縛される前か、捕縛後悟られずにこの無線のスイッチをオンにしておき、内部の会話を筒抜けにしていた...となります。うまく会話の中に状況が分かるように話を向けたりしていたかもしれません。

しかし、こういう局面でなぜ特技の催眠術を使わないのでしょう。エメロンちゃんの前で精神が統一できなかったのでしょうかね?

投稿: Grünherz | 2008年12月16日 (火) 23時35分

大口径マシンガンでの狙撃が注目された、フォークランド紛争時のアルゼンチン軍もワイルド7を参考にしたのかもしれない。

投稿: | 2018年2月20日 (火) 15時33分

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