もうすぐ、野口聡一さんが搭乗したスペースシャトルが打ち上げられる。
野口さんは茅ヶ崎市出身なので地元での注目度は極めて高い。
僕は茅ヶ崎といろいろ縁があって海岸侵食の防止や浜の景観を守るための活動をしているのだが、その活動の中で「野口さんの親と知り合い」とか「近所ですれ違った」といった話が出て来るし、公民館などには野口さんの宇宙服姿のポスターが掲げてある。シャトルが市の上空を通過する際に、市のシンボル「えぼし岩」をライトアップして宇宙から見えるようにしよう、といったプロジェクトも進められているようだ。
そんな状況なので、今回のフライトにはとりわけ親近感があり、同時に不安感もある。完全に観客的、第三者的なスタンスを取れないのだ。
この本(右のリストに表示されている)を書店で見かけたとき、買うかどうか迷った。不安が募るようなタイトルだったからだ。だが、この本の著者のメッセージ「自分の頭で考えなくてはならない」は僕のポリシーでもあるので思い切って購入した。
解説で作家が書いているが、この本はスペースシャトルを失敗作だと断定し、その理由を細かく解説した(恐らく)世界で最初の本らしい。聞いたこともない版元だが、サイエンスライターの著者は極めて分りやすく宇宙開発事業の構造、技術を解説してくれている。かなりの良書だと思う。
この本を読んでいると非常にやるせない気分になってくる。宇宙開発は巨大な公共事業であり、いつしか「業界」の維持が事業目的になってくる。計画は出来るだけ開発にコストがかかるものでなければならない...。純粋に技術的な見地からコンセプトを決めることができないのだ。
結果、でき上がったのは、すべてに凡庸な性能、高コスト、低安全性の「寸足らずの万能機械」。でも国家的プロパガンダで人々は「宇宙新時代の到来」を信じてしまった。
しかも、アメリカは、この「夢」に自国民だけでなく全世界を巻き込んでしまった。スペースシャトルの性能を信頼して立てられた各国の宇宙開発計画は軒並み大迷惑を被った。我が国も例外ではない。納税者として、これは看過出来ない問題だ。
完全な再利用タイプの宇宙往還機は、幻想に過ぎなかったのだろうか。技術的、コスト的にかなり難しいようだが、SFファンとしては、夢が砕かれるようでショックを受けた。SFで描かれたようなものを作ろうとしてしまったのか?技術的な観点から考えずに。
アメリカ政府は高コストのスペースシャトルに嫌気がさし、2010年には全機退役させるそうだ。国際宇宙ステーションを最低限の規模で完成させて自国の責任を果たし、それと同時にシャトルからも手を引くという算段だ。
こんな終わりが見えている計画なのに、無理とムダが多く危険な機体なのに、やはり飛ばなくてはならないのか....。
過酷な宇宙開発の現実を当事者の立場から描いたエドモンド・ハミルトンのSF小説(「向こうはどんなところだい?」)が脳裏に浮かんで来る。とにかく無事に帰って来て欲しい。
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